(転送転載拡散大歓迎)
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イラク戦争なんだったの!?-
イラク戦争の検証を求めるネットワーク
メールニュース 2012年9月15日号
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全国の賛同者の皆さま、こんにちは。「イラク戦争なんだったの!?
―イラク戦争の検証を求めるネットワーク」事務局の志葉です。
前回でもお伝えしたように、イラク戦争の検証を求めるネットワークは、
来年3月のイラク戦争開戦10年にむけ、海外ゲストを交えた「イラク戦争
10年」キャンペーンを企画しております。今週末、イラク戦争の検証を求め
るネットワーク関西の主催で、大阪でイベントがありますので、是非ご参加
下さい!
さて、今回のトピックです。
1.関連イベントの紹介
2.小児白血病を乗り越えて ザイナブさんとフサームさんのお話
3.活動費ご支援のお願い!
4.賛同者の皆さんへのお願い
5.イラク戦争なんだったの!?関連書籍・関連動画
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
1.関連イベントの紹介
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
【大阪・9/16・主催イベント】
「おおさか社会フォーラム2012」ワークショップのご案内
イラク戦争の検証‐日本が果たすべき責任と役割
明日16日13:30pm~16:00pm エルおおさか会議室709
でイラクから戻った日本イラク医療支援ネットワークの
佐藤真紀とイラク戦争検証を求めるネットワーク事務局長
の志葉玲が最新現地情報やイラク戦争検証についてトーク
します。おおさか社会フォーラムの企画の一つで、イラク
戦争10年企画の一環。
日時 9月16日(日)13:30pm~16:00pm
会場 エルおおさか会議室709
http://www.l-osaka.or.jp/pages/access.html
参加費不要(おおさか社会フォーラムへの入場料1000円が必要です)
※おさか社会フォーラムについては公式サイトをご覧ください
http://osaka.socialforum.jp/
スピーカー:
日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)事務局長 佐藤真紀
イラク戦争の検証を求めるネットワーク事務局長 志葉玲
主催:
イラク戦争の検証を求める関西 http://iraqwar-inquiry.net/
regretiraqwar@gmail.com
協賛:
イマジンイラク実行委員会、イラクの子どもを救う会、
イラクの子どもを支援する大阪市民基金、市民社会フォーラム
【京都・9/22・協賛イベント】
■□ Imagine IRAQ Contemporary □■
―同時代の想像力を検証する学習会―
★★★ 第四夜 ★★★
<あなた>とシャカイ
― 石田徹也とイラク戦争 ―
進行:前野覚/水野敬
日時: 2012年9月22日(土)18:00開場 18:30-20:30
場所:京都二条 カフェ パラン
(JR嵯峨野線・地下鉄東西線「二条」駅 徒歩2分)
http://s.tabelog.com/kyoto/A2602/A260203/26015696/
参加費:ワンドリンク
主催:イマジンイラク実行委員会
共催:フレンズ・オブ・マーシーハンズ、JIM-NET☆なら☆
協賛:イラク戦争の検証を求めるネットワーク関西、市民社会フォーラム
連絡先:imagine_iraq@yahoo.co.jp
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FEATURED AUTHOR
石田徹也(いしだ・てつや)
1973年6月16日静岡県焼津市生れ。
武蔵野美大卒。画家。
2005年5月25日東京都町田市にて踏切事故で死去。
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これまで、 Contemporary 第一夜から第三夜にかけては、
日本の小説家・伊藤計劃(1974~2009)を取り上げてきました。
今回、第四夜は、日本の画家・石田徹也とその作品群を取り上げます。
石田徹也は、悲しげな青年をモチーフにした独特の作風で世に知られています。
彼は、「この世界の空気」、あまりにも自明すぎる<陰惨さを排した>風景を、
それにふさわしく極めて落ち着いたトーンで、「私たちにはなにもない」と
言い含めるように描きました。そしてその作品は作家の死後も、
多くの若い世代の心をとらえ続けています。
「物語以外の場所」にある「どこかにいる誰か」のものがたり・・・
私たちの試みが、自明性に彩られたシャカイを突破しようと挫折した
同時代の誰かの鎮魂につながるなら幸いです。(T)
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■イマジンイラク実行委員会と “Contemporary” について
イラク戦争・・・とは、あなたにとって何だったのか?
イラクを蹂躙し占領した連合国は自画自賛のうちに去り、あとには混沌の
「国家」が残されました。「イラクとは、はじめからそのような場所だったのだ」と嘯いて。
イラク戦争とは、「あなた」にとって、
居心地の悪い空席に座らされる体験でなくてはなりません。
これまで、イマジンイラク実行委員会は、1970年代の日本人技術者が撮った
「平和だったイラク」の原像を通じて、イラク戦争によってそこに住む人々が
何を喪い何を奪われたのかを問う写真展示企画を中心に活動してきました。
しかし、2011年3月11日以降、自らを取り巻くシャカイの歪みに直面した私たちは、
自らの想像力を根本から問い直すことを決議し、イラク戦争を通じて
自らの属するシャカイのもたらす加害を自らのテーマとした同時代の作家
(特に日本語圏の小説家、画家等)に注目した学習会、
Imagine IRAQ Contemporary を企画することにしました。
私たちの在り方・・・「シャカイが生き残る」ためのルーティンを忠実に履行すべく
プログラミングされた擬制の主体・・・その解体に全身を賭けた作家たちの試みを
追いかけ、私たちがこれからの時代を「自分で生き延びる」ための在り方を、
あなたも模索しませんか?そう、そこの「あなた」です。(T)
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*会期中は、カフェの一室をお借りして、70年代のイラクの写真を数点展示します。
*学習会は、カフェ営業中にオープン形式で行います。どなたでもお気軽にご参加ください。
*次回は、日本の漫画家・木崎ひろすけを取り上げます。
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2.小児白血病を乗り越えて ザイナブさんとフサームさんのお話
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
湾岸戦争、イラク戦争で、大量の劣化ウラン弾が使用されたイラクでは、
劣化ウラン弾が原因とみられる、健康被害が相次いでいます。この度、
イラク南部バスラ市から、バスラ子ども専門病院でがん治療に心血を注ぐ、
フサーム・サリッヒ医師と、白血病の元患者で現在は日本イラク医療支援
ネットワーク(Jim-net)の現地メンバーとして、病院内学級で活動する
ザイナブさんが来日し、彼らのお話をうかがう機会がありました。9月
8日、東京・文京シビックセンターで行われたザイナブさん、フサーム
医師のお話をご紹介します(文責:志葉玲)。
◯ザイナブさんのお話
ザイナブさんは、バスラ出身の女性で現在21歳。13歳に小児白血病を
発症し、Jim-netに通院費の支援を受けながら、2年半の闘病生活を経て、
治癒。19歳の頃から、Jim-netの現地メンバーとして、病院内学級で入院
中の子ども達に勉強や絵を教えているとのことです。日本では、治癒率
が8割の白血病も、イラクでは医薬品の不足から5割程度。特に貧困層で
は治療の継続が難しいなどから「不治の病」と見られている中、日本の
NGOからの支援で治療を終えることのできたザイナブさんの存在は、
日本とイラクの医療支援関係者にとって、大きな励みになっているそう
です。
ザイナブさんは「白血病と診断された時、私は自分の病気がなんであるか
知らされませんでした」と振り返ります。「医者が父親に『病名を母親に
知らせないように』と話しているのを聞いてしましました。自分も何の
病気か聞かされなかったけど、すごく怖かったです。まわりの患者もどん
どん亡くなっていましたから」(ザイナブさん)
「最初私は、一般の病院にいましたが、私のいとこが、病院の研究室で
アシスタントをしていたので、子ども専門病院に移るように手配してく
れました。私は小児ガン病棟に入れられましたが、病名は『扁桃腺の炎
症』だと伝えられていました。まわりの子ども達は、髪が抜けていまし
たが、私は、なぜ彼らがそんな姿になっているか、わかりませんでした。
入院している間、母親はずっと泣いていました。何故、泣くのと聞くと
『家に残した(ザイナブさんの)兄弟が心配』だと言っていました」
「治療のため、骨髄摂取した時は、麻酔も効いておらず、私は自分の
胸に注射針が刺さるのを見ることになりました。とても痛く、怖かった
です。やがて、放射線治療や薬物治療が始まり、私の髪は抜け落ちて
いきました。髪を失ったことは、とても辛く、病気そのものより悲し
かったくらいでした」(ザイナブさん)。
白血病の治療後、ザイナブさんが院内学級で子ども達のケアを始めた
のは「自分も同じ病気をしたので、小児白血病の子ども達の気持ちが
わかるから」だそうです。
「子ども達に薬をしっかり飲み、免疫を強くする食べ物をちゃんと
食べるよう促します。私もそうでしたが、女の子にとって髪に抜ける
ことは、とても辛いことですが、気にし過ぎないように伝えています。
髪は治療後にまた生えてくるから大丈夫だと。勉強や絵を教える他、
子ども達を遠足に連れていくこともします。病気を克服した子どもと
一緒に遠足に行く事で、闘病中の子ども達に、自分たちも頑張ろうと
希望を持ってもらうためです」(ザイナブさん)
現在21歳のザイナブさんが白血病になってしまったのが、13歳の時
ですから、ちょうどイラク情勢がますます悪化しはじめた頃と重な
ります。戦争の影響は、ザイナブさんの治療にも大きな影響を及ぼ
しました。
「当時、情勢はとても悪く、病院に通うことは大変な危険なことで
したが、私の家族はそれを強いられました。医薬品も充分に入って
来ず、治療は大変困難な中で行われました。そもそも、私の病気自
体、(劣化ウラン弾などの)戦争の影響によるものだったと思って
います」(ザイナブさん)。
多くの困難にもかかわらず、治療を終え、今はかつての自分と同じ
境遇の子ども達のために奮闘するザイナブさん。日本の支援には
とても感謝しているそうです。
「体中チューブだらけとなり、それを外して自由に動き回れるように
なることは、私の夢でしたが、2年半の治療で、ようやくその夢がか
ないました。治療してくれたフサーム医師や、支援してくれたセーブ
・ザ・イラクチルドレン広島やJim-netの皆さんにとても感謝してい
ます」(ザイナブさん)。
◯フサーム医師のお話
「Jim-netをはじめ、様々なNGOのおかげで治療を続けられ、多くの
患者が助かった。そのひとりがザイナブだ」と冒頭、謝辞を述べた
フサーム医師。彼は「1990年に医療活動に従事するようになってから、
常に物資の不足に悩まされ続けている」と語ります。
「湾岸戦争後の対イラク経済制裁で、薬や医療機器、備品に欠けてい
ました。1992年に小児ガンセンターが開設されましたが、ベッドも充
分なく床に患者が座る状況。患者同士が離れてた方がいいのだが、部屋
が狭く、くっついていました。イラク開戦後、ブッシュ大統領(当時)
夫人ローラ・ブッシュの寄付による病院が建設されるなど、新しく専門
病院ができましたが、整ったのは箱だけ。薬やCTスキャン、検査ラボな
どいろいろ揃えなくてはいけません」(フサーム医師)。
現地での子どものガンについては「最も多いのが、白血病や悪性リンパ
腫」と語ります。「バスラ子ども専門病院での統計では2004年から2011
年の新規の小児ガン発見総数は634例で、急性リンパ性白血病が330例、
リンパ腫ガンが80例、急性骨髄性白血病が74例などです。乳幼児のガン
は少ないはずなのに、1~4歳の子どものガンが多いのです。子どもの
甲状腺ガンは戦争前はほとんど見ませんでした。また、様々な先天性
障害を抱えた子ども達がいます。髄膜瘤*や心臓疾患も多い。先天性障害
の合併症を抱えた子ども達も少なくありません」(フサーム医師)。
*本来、背骨や脊柱管の中で保護されているはずの脊髄、髄液が外に
露出した状態で生まれてくる障害。脊髄損傷による神経機能や内蔵機能
の低下、感染症の原因などになる。
興味深いことに、患者の多い地域と劣化ウラン弾が使用された地域が
重なると、フサーム医師は言います。「湾岸戦争後はバスラ西方の
地域からの患者が多かったが、イラク戦争からはバスラ中心部からの
患者が増えた。これは劣化ウラン弾が多用された地域とぴったり重な
るのです。劣化ウラン弾は、湾岸戦争で300トン以上、イラク戦争では
1500トン以上使われたと見られています」。
フサーム医師らはガン治療に尽力していますが、様々な要因により、
治療が完全に出来ないこともあるようです。「抗生物質や抗ガン剤の
不足が深刻です。確保しているのは全体の66%。がんの種類を特定
する機器がない。CTスキャンやMRIとかもない。そのため、診断ミス
や、早期発見ができない原因となっています。輸血用のきれいな
血液を準備できる体制も整っておらず、満足な研修ができないため、
医師の検査技術も不十分です。また患者側も治療を最後まで行わず、
放棄してしまう人々がいます。治安の悪さから、通院自体がリスクを
伴うこと、必要な薬代や検査代が払えず、治療をあきらめざる得ない、
などです。戦争前には国民皆保険制度がイラクにはあったのですが、
戦争でこうした制度も失われてしまいました。民間の病院もあるの
ですが、高額な医療費を低所得者層が支払うのは難しい。彼らが利用
できる政府系の病院は予約は2~3ヶ月後です」(フサーム医師)。
治安や社会インフラについても、依然、厳しい状況であり、生活は
むしろ悪化していると、フサーム医師は嘆きます。「相変わらず、
安全な水のや電気の供給が滞っており、特にバグダッド周辺など
の治安は再び悪化しています。そのためもあり、科学者などの頭脳
流出が深刻です。政府の教育支援も失われ、かつて識字率93%を誇っ
たイラクですが、現在は39%にまで低下しました。これらの状況は、
戦争による破壊が深刻だったのと、サダム後の政府が弱く、政治家
といえば、政争ばかり、自分の利益ばかり。イラクの人々の生活
を立て直すことを誰も考えていないのです。健康障害の原因とみら
れる劣化ウラン汚染についても、政府による放射能に対する教育が
ほとんどなく、被曝防御が行われていません。米軍はイラクから
撤退しましたが、要塞の様な大使館からイラク政府ににらみをきか
せており、国際的、包括的な劣化ウラン汚染についての調査や対策
がなされないままなのです」(フサーム医師)。
◯イラク危機は終わっていない
日本では、イラク戦争が終わったこととされ、東日本大震災や
原発事故などから、市民運動の間でも、その視点は内向きとなっ
ています。しかし、日本が国際法違反のイラク戦争を支持・支援
したことには変わりなく、自衛隊の海外派遣や、在日米軍のあり
方などは、現在にも続く問題です。また、低線量被曝・内部被曝
と健康障害、被曝防御や汚染源への対応、といった問題はイラク
と原発事故後の日本が共有できる課題と言えるでしょう。
(了)
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3.活動費ご支援のお願い!
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賛同者の皆さまにお願いです。来年3月のイラク戦争10年に
イベントでは、海外ゲストの招聘など、多額の費用が必要となる
ことは確実です。 是非、多くの方々からのご助力いただけます
よう、事務局一同願っております。
活動資金カンパ (1口1,000円以上) 振り込み先
郵便振替の場合
口座番号:00230-6-116390
口座名:イラク戦争の検証を求めるネットワーク
他金融機関からの振込みの場合
ゆうちょ銀行 当座預金
店番:029(ゼロニキュウ) 口座番号:0116390
口座名:イラク戦争の検証を求めるネットワーク
是非、ご協力よろしくお願い致します。
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4.賛同者の皆さんへのお願い
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メールニュース読者の皆さんに三つお願いがあります!
☆お願い・その1☆地元の国会議員に働きかけて下さい
地元の国会議員へ、イラク戦争検証議連に入っているか
問い合わせたり、入っている場合は激励、まだの場合には
入るように進めていただく、などの働きかけをしてもらえ
れば、と考えていますので、ご協力ご検討下さいませ。
*地元の国会議員は以下のサイトで探すのが便利です。
ご自分のお住まいの自治体をクリックすると、その
選挙区の議員が表示されます。
http://seiji.yahoo.co.jp/area/
*多くの議員は各自ホームページを持っており、事務所の連絡先も
ホームページ内にあることがほとんどです。議員は自分の選挙区の
有権者は無視できないので、しっかり声を伝えましょう。
☆お願い・その2☆署名を集めてください!
おかげさまでイラク戦争の検証委員会設置への賛同署名は4万筆
を越えました!第一次集約したものを首相官邸に提出、要請行動を
行いましたが、第二次集約での集約のため、今後も賛同署名を募集
します。
つきましては、FAX・郵送用での賛同シートを以下URLからダウン
ロードの上、署名を集めて下さい。記入項目で、メールアドレスを
書かれた方には、当ネットワークからのメールニュースをお届けし
ます。
個人用賛同用紙
http://iraqwar-inquiry.net/files/iraq_printout_single.pdf
複数署名賛同用紙
http://iraqwar-inquiry.net/files/iraq_printout.pdf
FAX:020-4669-7585
*上記番号に送れない場合> 03-3209-5122
郵送先:
〒171-0033
東京都豊島区高田3-10-24 第二大島ビル303
イラク戦争の検証を求めるネットワーク
個人のブログ やツイッター、mixiなどを利用されている方々は、以下の
様に賛同募集を転載してください。もちろん、メールでの転送も大歓迎です。
*******************************************************
【拡散希望】イラク戦争検証の必要性は認めつつも、なかなか
腰の重い政府に民意を示すため、イラク戦争検証( @isnn_ )へ
の賛同者を大募集。オンラインからも簡単にできますので、是非、
ご協力御願いします。
賛同フォーム> http://bit.ly/9b4OWA
*******************************************************
☆お願い・その3☆メールニュースを広めて下さい!
本メールニュースは、イラク戦争の検証を求めるネットワークの賛同人の
方々の中からメールアドレスをいただいた方へ配信していますが、転送・
転載は自由です。ブログやml等、ネット上に広めていただくことは、
当ネットワークとしましても大歓迎です。イラク戦争の検証を求める動き
があるということを、より多くの人々に知ってもらうため、ご協力いただけ
れば幸いです。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
5.イラク戦争なんだったの!?関連書籍・関連動画
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
当ネットワーク関連書籍・関連動画です。ご購入や、ご視聴、
ブログやツイッター等でのご紹介よろしくお願い致します。是非、
ご協力よろしくお願い致します
☆【動画】「イラクと福島―佐藤栄佐久元知事と“国策”を問う」
http://youtu.be/wFLiltIYoyg
☆【動画】イラク戦争・空爆下のバグダッド by 志葉玲
http://youtu.be/hl4VQLiDv34
☆【動画】佐藤真紀さんインタビュー動画
OurPlanetTV「911事件から10年~イラクと福島を結ぶ 」
http://www.ustream.tv/recorded/17140558
☆【動画】4万筆署名を首相官邸に提出!
イラク戦争なんだったの!?―イラク戦争の検証を求める
ネットワークは、先月29日、全国から集めたイラク戦争の
検証実現を求める賛同署名約 4万筆、内閣官房に提出し、
検証実現を要請しました!
報告会見動画↓
http://www.ustream.tv/recorded/17570168
☆『希望 命のメッセージ』(東京書籍)
鎌田 實 ・ 佐藤 真紀 (著)
http://amzn.to/qUYFgs
当ネットワーク呼びかけ人の鎌田さん、佐藤さんの共著。今月1日に
発売したばかりです!この本の印税はすべて、JIM-NETを通して
被災地の子どものために使われます。
☆『脱・同盟時代―総理官邸でイラクの自衛隊を統括した男の
自省と対話』(柳沢協二/かもがわ出版)
http://amzn.to/oi2SUC (amazon)
http://p.twipple.jp/zYYuS (帯あり画像)
*当ネットワーク呼びかけ人の池田香代子さんと志葉が、柳沢さんと
鼎談しています。
関連動画↓
http://www.ustream.tv/recorded/17471711
http://www.ustream.tv/recorded/17472693
☆『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同出版)
イラク戦争の検証を求めるネットワーク 編
http://amzn.to/ouGArE
☆『破壊と希望のイラク』(金曜日)
高遠菜穂子 著
http://amzn.to/ncRcnk
☆【動画】『イラク人が見た自衛隊、米軍基地、刑務所―
ワリード・ホマディ氏証言会』
http://www.ustream.tv/recorded/16347142
☆【動画】『検証 震災・原発報道とイラク戦争 』
http://www.ustream.tv/recorded/16574652
☆【動画】『フクシマとイラク-放射能時代を生きる』
公式 http://www.ustream.tv/recorded/15017089
岩上チャンネル http://www.ustream.tv/recorded/15009489
☆【動画】『ビデオニュースドットコム
イギリスのイラク戦争検証から何を学ぶか』
http://www.youtube.com/user/videonewscom#p/u/73/8wI8lLTDOWg
*約5分間のプレビューです。
☆【動画】『Bagdad So Sad』
http://bit.ly/pw6HwF
*開戦8年目のイラクの状況を伝えるスライドショー。
☆【動画】
『シンポジウム イラク戦争なんだったの!?日本での検証実現にむけて』
http://www.youtube.com/playlist?list=PL60D82D32FAFF89DE
☆【動画】『イラク戦争何だったの!? ビサイナとシェイマの場合』
http://youtu.be/RoMlWpamEEg
以上、ご報告とご協力のお願いでした。今後とも、応援いただけます
よう、ご期待申し上げます。
☆=========================================☆
イラク戦争なんだったの!?―
イラク戦争の検証を求めるネットワーク
〒171-0033
東京都豊島区高田3-10-24 第二大島ビル303
Web:http://iraqwar-inquiry.net/
mail:office@iraqwar-inquiry.net
Tell:090-9328-9861(しば) Fax:03-3209-5122
☆=========================================☆
2012年9月16日日曜日
2012年9月14日金曜日
「シリーズ: 『スペインの経済危機』の正体(その6)」をお送りします。
「シリーズ: 『スペインの経済危機』の正体(その6)」をお送りします。い
つも長文で申し訳ないのですが、お時間が取れましたらお読みくださ い。もし
価値があるとお感じになりましたら、ご拡散をよろしくお願いします。
なお、911事件の11周年については、私としては昨年の10周年に作成した
次のもので十分だと思っておりますので、何も新たな文章は出しませ ん。
いま我々が 生きている虚構と神話の現代
http://doujibar.ganriki.net/evidences_abandoned_for_ten_years.html
2012年9月11日 バルセロナにて
童子丸開 拝
********************************************************
サーバーの仕様のため、サイトへのアップや変更の反映が遅れ る場合がありま
す。1~2日、お待ちください。
http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-6-not_crisis_but_swindles.html
シリーズ: 『スペインの経済危機』の正体(その6)
*「危機」ではない!詐欺だ!*
*●小さな実例に現れるシロアリどもの手口*
全国紙プブリコが2012年7月21日付の記事で伝えた次の事実
<http://www.publico.es/439870/banez-quiere-pagar-4-7-millones-por-un-
trabajo-que-costo-2-2-en-2011>をご紹介することから 始めよう。
スペインの雇用・社会保障省(大臣はファティマ・バニェス)は6月13日
に、ある政府通達文書を印刷し全国の事務所や工場、商店、役所な どに郵送す
る作業 を民間業者に委託した。この政府通達文書とは、単に「トイレでの禁煙
徹底」を命じるだけの内容なのだが、問題はその費用である。
政府の通達文書を印刷して郵送する作業は1993年から民間業者に委託され
ているのだが、この「トイレ禁煙文書」の業務は最初は 2009年1月にある
業者が約*65万ユーロ*(約6500万円)で請け負った。ちょうど不動産バブ
ルが はじけて建設業を中心に失業が広がり不況の様相が具体的に現れ始めてい
た時期だった。
その2年後の2011年2月に、サパテロ社会労働党政府は他の業者に*全く
同じ作業に220万ユーロ*(約 2.2億円)*を支払った*。それは失業率が
20%に近づき公的債務が急上昇して社会福祉が大幅に削減さ れようとしてい
たときだった。
そしてその1年半後、大銀行を救うために血税がつぎ込まれたあげく事実上の
国家破産状態となり、公的部門の労働者が大量に解雇され公務 員のボーナス全
面カットが決定されたというときに、ラホイ国民党政府は、この*65万ユーロ
で済む作業に470万ユーロ*(約 4.7億円)*の予算を組んだ*のである。
これがこの国で行われる公金横領の手口の一端だが、一事が万事、すべてこ
の調子である。スペイン政府は一方で「カネが無い、カネが無い」 と叫んで低
賃金勤 労者の生活を滅多切りにしているのだが、その一方でこうやって多額の
公金を「行方不明」にさせる。もっとも、危険なばかりで糞の役にも立 たない
「もん じゅ」などという施設に何兆円もつぎ込み続ける日本国政府よりはまし
かもしれないが。(いやいや、「糞の役にも立たない」などと言うと糞 に叱ら
れる。人間や動物の糞は従来から人間の食生活と命を支えてきた
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/unko.html>の だ。)
これは一部の公務員による内部告発なのだが、プブリコによると、どうやら
官僚と政治家と業者の間に「禁煙」をネタにしたある種の「カルテ ル」が作ら
れてい るようだ。納税者(合法的に在住する外国人を含む)の税金にたかるシ
ロアリ集団にとっては、あらゆる名目がたかりのネタになりうる。
スペインで は2005年以来、社会労働党政権によって建築物内での喫煙の
禁止が段階を追って実施された。マスコミを動員して肺癌や受動喫煙の害を印
象付ける反タバ コ・キャンペーンに続いて、2007年に個人の住居と小規模
なレストランやバル(カフェ)を除くあらゆる建築物の内部での喫煙が法律に
よって禁止された。 そして前述のようにサパテロ政権が65万ユーロで済む作
業に220万ユーロをばら撒く直前(2011年1月)に、この禁煙法は強化さ
れ た。それによると、 個人の住居を除く全ての建築物内での喫煙が禁止され
る。ホテルだけは例外的に客室の30%までを喫煙可能にできるが、他の部屋と
厳しい基 準に従って隔離さ れていなければならない。
こうしてスペイン中で喫煙可能な場所が厳しく制限されたのだが、一方で歴代
政府による「トイレ禁煙文書」が作った「差 額」がどこに消えたのか誰も知ら
ない。法律による喫煙の制限はヒトラーのナチス政権が最初と言われるが、この
種の措置には鼻もひん曲がる 悪臭が漂う。これ に比べるとタバコの臭いなどさ
したる問題でもあるまい。
もう一つ、2012年7月24日付のエル・ムンド紙
<http://elmundo.orbyt.es/2012/07/23/elmundo_en_orbyt/1343070715.html>に
よって知らされた事実を見 てみよう。
このシリーズの(その1)
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-2-ruling_class.html>で 書い
たとおり、現スペイン国王フアン・カルロス1世の娘婿であるパルマ公イニャー
キ・ウルダンガリンは大掛かりな公金横領事件で裁判中の 身となっている。 そ
のウルダンガリンが主催するノース財団は、2005年と2006年にマジョル
カ島でスポーツ振興のためのイベントを行った。それは*そ れぞれ120万ユー
ロ*(当時のレートで2億円ほど)を使って行われ、2回分で240万ユーロの
出費だったのだが、 その資金は全てバレアレス州の公金だった。
ところが今年になってバレアレス州が同じ内容で同じ規模で行ったイベントの
費用は*わずか8万ユーロ*、 つまり*ノース財団が使った金額の15分の1*
<http://www.lavozlibre.com/noticias/ampliar/618994/baleares-hace-otro-
congreso-igual-al-de-noos-pero-15-veces-mas-barato>*だっ た*のである!
つまり、ウルダンガリンとその取り巻きグループ(国民党の地方政治家を含む)
によって使用された*公 金の15分の14*が、あれやこれやの名目を付けた請
求書と引き換えに、シロアリどもの個人資産へと消えたことにな る。この件は
現在公判中なので、ひょっとするとその一部くらいは明らかにされるのかもしれ
ない。
*●シロアリの巣・・・金融・投資機関*
いま取り上げた二つの例はほんの小さな事実に過ぎないのだが、これらを単に
個人あるいは小集団の道徳的退廃などのせいにすることは決定 的に誤ってい
る。このシリーズで明らかなように、国家と社会全体の構造に関わるものだ。*
数匹のシロアリの姿を見たならそ の付近に大規模なシロアリの巣があると確信
できる*だろう。実際に、スペインだけではなく欧州各地域には歴史的に形 成さ
れてきた巨大なシロアリの巣が存在する。これは陰謀論でも何でもなく現実であ
り、このシリーズでお目にかけたスペインのコソ泥どもの 背後には*「国境なき
大泥棒」の集団*が存在している。その点については*このシリーズの 最終回
(その7)*でもう少し詳しく述べてみたい。
2012年8月31日付のスペイン各主要紙は、*この年の**前半6ヶ月だけ
でおよそ2200億ユーロ(約22兆円)もの資金が*
<http://www.publico.es/dinero/441587/la-salida-de-capitales-de-espana-
suma-219-817-millones-hasta-junio>*スペインの銀行から引き揚げられた*こと
を報じている。これはスペイン中央銀行のデータ
<http://www.bde.es/webbde/es/estadis/infoest/a1701.pdf>によるものだが、
1月から3月ま での上四半期に逃避した資金が約970億ユーロ
<http://www.abc.es/20120531/economia/abci-salida-capitales-espana-llego-
201205311126.html>だから、それ以 降の危機の進行、特にバンキア銀行の事実
上の倒産が猛烈な資本の引き揚げを招いたことが明らかになる。エル・パイス紙
によれば
<http://economia.elpais.com/economia/2012/08/31/actualidad
/1346402710_181010.html>、前年2011年の6月末段階でス ペインの銀行の
収支バランスは約225億ユーロの黒字であり、その後*1年の間に3156億
ユーロ(約31兆5千億円)が スペインから逃げていった*。ただしこれらの数
字は、スペイン財政の破綻が明らかになって以降の資本逃避の一部に過 ぎな
い。バブル経済の最中に引っかき集められてタックスヘイブンなど国外に移送さ
れた資産を加えるなら、どれほどの資金がこの国から離れ ていったのか、想像
もつかない。
もちろん「沈むかける船」に留まる馬鹿なネズミがいるわけもないのだが、し
かし逆の側から見ると、ロクな自前の産業基盤を持たないスペ インのような国
に、これほどに大量の資金が流れ込んでいたこと自体が驚きであろう。実際に
(その1)
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-a_spiral_of_crisis.html>の
Socialist Review誌記事の訳でもご紹介したとおり、*21世紀の最初の数年
間、スペインは欧州の中でも最も熱気にあふれた投資 の場だった。*いったいど
うしてそんなことになるのか。
1990年代末ごろから、特に*2002年のユーロ導入以降*なのだが、国や
自治体は民間の土建業者と 手を組んで、まるで何かにとりつかれたように飛行
場、鉄道、高速道路、工場団地、港湾設備などの*ろくに使われもしないイ ンフ
ラの整備*にまい進した。民間業者は開発許可を簡単に手に入れて*広大な「ゴー
ストタウン」*を 作り続けた。スペインの銀行は、中小の貯蓄銀行(カハ、地方
によってはカシャ、カイシャと呼ばれる)を含めて、土木・建築工事に*資 金を
滝のようにつぎ込んだ*。その過程と結果については(その3A)
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-3a-newly_constructed_gohst-
town_in_whole_Spain.html>、(その3B)
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-3b-
the_end_of_the_bubble.html>でご紹介したとおりである。そのうえに*想 像を
絶する規模で公金略奪の手段とされただけの数多くのイベント*が組まれた。当
時のアスナール政権はスペインを 延々と続く「右上がり経済」の幻覚の中に放
り込み、2004年以後のサパテロ政権もまたバブル経済の掌で踊り続けた。
その間に銀行は、本来なら融資を躊躇しなければならない人々にまで、*言葉
巧みに「ばら色の生活設計」を吹き込んで頭金 なし・低金利の住宅ローンを組
ませた*。これは当時の米国でのいわゆるサブプライムローンと同様のやり口な
のだが、 住宅ばかりではなく自動車や高級家具、高級家電製品にいたるまで、*
数字に弱く無計画な人々の生活を銀行ローンが縛り付け ていった*の である。
さらに、英国人、ドイツ人、フランス人たちが、欧州の中では格段に安かったス
ペインの不動産をさかんに買いあさり、住宅価格は急 上昇した。バルセ ロナな
どの都市の集合住宅でも、「高く売れる」と分かった家主たちが賃貸しをやめて
部屋を売り物件に変えたために、貸し物件が不足し家賃 もまた高騰した。 同時
にユーロ導入時の便乗値上げと後の原油価格の上昇もあって、この間にありとあ
らゆる物価が上がり続けたのである。
そして国家と国民の全体を巻き込んだこの狂乱は、米国で起こったと同様に、
そしてかつて日本で起こったと同様に、*銀行 の大掛かりな経営破たん*を引き
起こした。そしてスペインの銀行を突っ走らせた外国資本は、*多額の 「戦利
品」を懐に収めた挙句に借用書だけを残して立ち去った*というわけである。私
の「シリーズ:515スペイン大衆反乱 15M
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spanish_5-15_movements-01.html>」
でお知らせし たように、いま人々は「シロアリの巣」がどこにあるのか気づき
始めている。
もちろんだがそれは、ポール・グレイグ・ロバーツが示したように
<http://doujibar.ganriki.net/webspain
/Bankers_have_seized_Europe.html>、*ゴー ルドマンサックスなどの金融機関
とそれを後ろ盾にする格付企業等の企業群*であり、その「窓口」*欧 州中銀と
IMF*である。スペインのマスコミの中ではわずかにプブリコ紙だけが、ゴー
ルドマンサックスを取り上げて「危機が国際企業を太らせる」と指摘
<http://www.principiamarsupia.com/2012/09/03/como-goldman-sachs-creo-
una-crisis-alimentaria-internacional/>している。(そんなマスコミがあるだ
け日本よりマシか…。)ネオリベラル経済は単なる略奪経済であるだけではな
く、日本を狙うTPPの素顔
<http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/tpp-dec7.html>からも分か
るように、*巨 大資本による世界の私的で直接的な統治*を目指すものである。
それは*法も国家も超越した権力*な のだ。EUはその格好の「餌場」と化して
しまった。そしてスペインはいまの「経済危機」を通して、いずれ隅々まで巨大
資本の私有物に成り 果てるのかもしれない。
ドイツや北欧諸国のような国家と社会に対するしっかりした理念を持たず制度
的にもスキだらけの南欧諸国が、最初にそのターゲットになっ てしまっ
た。*2007年まで散々にこの国の狂乱経済を踊らせ続けたバブルの熱病は、
国の指導者だけではなく、産業界、官 僚機構、マスコミ、学術界、そして下々
の庶民にいたるまで社会の全体に感染*し、ただでさえタガの外れた金銭感覚と
貧弱な数字感覚しか持たないスペイン人の社会を打ち砕いていった。このシロア
リどもに食い荒らされた国家を支えるものは、もはやどこにも 無いだろう。
*これはもう詐欺としか言いようがあるまい。
*
*●ただいま崩壊中の国家と社会*
2000年代になってスペインでは「にわか金持ち」が街頭にあふれた。正
確には「ちょっと財布が膨んだので金持ちの仲間入りができたと思 い込んだ貧
乏人」 と言うべきだろう。そして彼らの多くが2007年以降、見る見るうち
に貧乏人に戻っていった。しかも、給料を下げられ、あぶく銭の臨時収 入を失
い、一部は 仕事を失い、高級自家用車を手放し、10年間で1.5~2倍に上
がった物価と情け容赦も無い消費税アップを前に何を買う意欲も失い、一部 の
不幸な者たちは 家賃もローンも払えずに自宅を失い、結局は以前よりもずっと
惨めな境遇に堕ちた自分と対面せざるを得なかったのである。以前の「貧乏」と
は全く異質の貧困 が彼らを待ち構えていた。《帰ってみればこはいかに!元いた
家も村も無く・・・》。浦島太郎は日本の御伽噺だけではない。
社会福祉団体カリタスの調べによると
<http://elpais.com/diario/2011/07/07/sociedad/1309989601_850215.html>、
現在スペインでは総人口の 20.8%(およそ1000万人)が貧困層であ
り、140万世帯で家族メンバーの誰一人として職に就くことができない。加え
てそれ以外 に、約50万世帯が失業保険や緊急の政府援助などの絵支援も途絶
え全く無収入の状態に置かれている。エル・ペリオディコ紙によると
<http://www.elperiodico.com/es/noticias/sociedad/mas-dos-millones-
espanoles-pasan-hambre-diario-1043728>、 2011年7月の段階ですでに
235万人が毎日飢えを感じ、国民の46%が食生活の質と量を落としていたの
だ。2012年9月からは、 EU、欧州中銀、 IMFのトロイカの命令に基づ
いて、消費税が大幅に引き上げられた。同時に公共輸送運賃、電気代、ガス代も
値上げされた。必死に倹約と我 慢を続ける国民の 努力にも、じきに限界が訪れ
るだろう。
スペイン政府はこんな状況をもたらした元凶である銀行を「救済する」ため
に、まず*教育、つまり将来の国家を支えるべき 人材の育成を切り捨てて*い
る。2011年4月以降の1年間で教育にかける費用は21.9%も削られた
<http://www.elmundo.es/elmundo/2012/04/03/espana/1333453157.html>。さら
に基礎的な科学研究の予算も25%削減
<http://www.elmundo.es/elmundo/2012/04/03/ciencia/1333450876.html>され
た。続いて*国 民の健康な身体を支える医療を切り捨てる*。2012~13年
度の予算からは保健医療の13.7%(70億ユーロ)が消えてなくなった
<http://www.elmundo.es/elmundo/2012/04/09/espana/1334000045.html>。これ
らの数字は今後も増え続けることだろう。要するにこの国の指導者は国の未来を
捨てたのだ。*彼ら の頭にあるのは、カネだけがあって人のいない「国」*である。
2012年5月14日にスペイン第2の銀行BBVA幹部は「現在の経済危機
はリーマンブラザーズ倒産時よりも深刻だ」という
<http://economia.elpais.com/economia/2012/05/14/actualidad
/1336995907_924156.html>認 識を示した。当然だ。サブプライムローンの焦げ
付きに端を発したリーマンブラザーズ倒産は、確かに米国と欧州の経済を激しく
揺り動かした が、それでも米国 の政治と経済はそのショックを直接に国家の破
滅にまで直結させないだけの分厚さを持っていた。しかしスペインは全く異な
る。上っ面の1枚 をはいだらそこに は何も残っていない。その上っ面の1枚を
支えていた外国からの投資はいっせいに引き上げられてしまった。放っておけば
この国の債務不履行 は避けられず、そ れはユーロ圏だけではなく欧州全体の崩
壊に結びつきかねない。それを防ぐ手段として*EUはIMFと共に欧州中銀に
よるス ペインの金融機関の直接統治を推し進める*作業に努めている。
当シリーズ(その4)
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-4-
ridicule_resque_of_banks.html>で 明らかにしたとおり、2012年6月、ス
ペイン救済とユーロ崩壊への対策としてドイツのメルケルが打ち出した雇用の創
出を柱とする「成長 策」は、欧州中銀 のマリオ・ドラギとイタリア首相のマリ
オ・モンティ(ともにゴールドマンサックスの関係者)の激しい抵抗に遭って頓
挫し、スペイン政府は 「即効性」を求め て、彼らの唱える銀行への直接の救済
路線に乗った。こうして、スペイン政府は*自力の経済健全化の可能性といっ
しょに国家 の主権を投げ捨てた*のである。結果として国は分裂し、その国民は
文字通りの「棄民」と成り果てるほかにはあるま い。
スペイン国内でいまカタルーニャの独立意識が階層や党派を超えて不自然なほ
ど急激に盛り上がりつつある
<http://www.publico.es/espana/441995/el-independentismo-crece-entre-los-
partidos-y-movimientos-catalanes>。公的な医療・厚生機関への給料遅配に
陥っているカタルーニャ州政府は先日、マドリッドの中央政府に50億ユーロの
資金援助を要請した
<http://www.publico.es/espana/441465/catalunya-pide-5-023-millones-como-
rescate-y-dice-que-no-aceptara-condiciones-politicas>ば かりだ。しかしそ
れは逆にカタルーニャ人のマドリッドに対する反感を強める結果となっている。
この9月11日、「カタルーニャの日」にバ ルセロナで行われた独立要求のデ
モには、主催者発表で200万人、市交通警察の発表で150万人が集まり、
<http://www.elperiodico.com/es/noticias/diada-2012/manifestacion-diada-
barcelona-2202293>市の中心部一帯の大通りを数時間にわたって埋め尽くした。
この種のデモや集会を常に極端に過小評価する国家警察ですら 「60万人が参
加した」ことを認めざるを得なかったのだ。
カタルーニャだけではなく、スペインにある17の自治州はそれぞれに借金を
背負い財政破綻寸前の状況にあり、その多くが国の「自治体救 済基金(FLA:
Fondo de Liquidez Autono'mico)」からの資金援助を申請しなければならない
状態である。その中でマドリッド、ガリシア、ラ・リオハの3つの州は中央政府
からの資金借り入れの予定が無い
<http://politica.elpais.com/politica/2012/09/04/actualidad
/1346788531_370011.html>。つまり、今までさしたる赤字なしで州の運営を行っ
てきたということだが、なんとも腑に落ちない。バレンシアを除いて スペイン
の中で公金略奪の最も激しいと思われる地域がマドリッドとガリシアだからだ。
かつての独裁者フランシス・フランコによって最大限に権威付けられたマド
リッド州とマドリッド市は現在の国政与党国民党の牙城であり、ま たガリシア
はその フランコ、最後のフランコ政権閣僚で国民党創設に力を尽くして今年死
去したマニュエル・フラガ、そして現首相マリアノ・ラホイの出身地で ある。
歴史的にま ともな工業生産を行ったことの無いマドリッドにはスペイン中から
の税金と資金が集中する。また伝統的な1次産業と観光以外にろくな収入源 を
持たないガリシ ア州の豪華なインフラ整備が大規模な国庫補助によって支えら
れてきたことは言うまでも無い。
民族意識の高いカタルーニャ人たちの間では、工業化 の進んだカタルーニャ
の資金の多くが中央政府に吸い上げられてマドリッドやガリシアにばら撒かれ、
フランコの子分とその取り巻きどもの懐 を潤し続けている と信じる者が多い。
そして州政府が頭を下げて中央政府からの借金をお願いするような事態に、カタ
ルーニャ人たちの苛立ちは爆発寸前になっ ている。
一方、EUではバロッゾ委員長自ら、「仮定での話」という注釈つきではある
が、史上初めて「カタルーニャ独立」とその「国際的な承認」についての発言
<http://www.elperiodico.com/es/noticias/politica/bruselas-habla-
independencia-catalunya-2195069>を 行った。9月11日にはEU本部は「仮
にカタルーニャが独立したとしても、直ちにEUに加われるわけではなく、正式
な申請をしなければならない」
<http://politica.elpais.com/politica/2012/09/11/actualidad
/1347366634_518448.html>と釘を刺したのだが、それにしても、カタルーニャ独
立、つまりスペインの分裂を念頭に置いた発言であり、大いに注目さ れる。カ
タルーニャ人たちは以前からスペインからの独立に対するEUの役割に期待し、
「スペインの中のカタルーニャ」ではなく「欧州の中の独立国家カタルーニャ
<http://www.11s2012.cat/>」の声が高まる。
マドリッド政府も内心その点を非常に恐れていると見えて、国庫資金借り入れ
に際してカタルーニャ州政府が出した「政治的な条件を一切付けるな」という要
求
<http://eldiadigital.es/not/62110
/cataluna_pide_un_rescate_pero_se_niega_a_aceptar_cualquier_condicion_politica
/>に 対して、ただ「負債を減らす努力をしてくれればよい」と答えたのみだっ
た。「政治的条件」を付けたとたんに何が起こるか、中央政府は十分 に理解で
きたので ある。この状況に、いまだフランコ主義が根強く残る軍内部で激しい
危機感が起こっている。8月末にフランシスコ・アラマン・カストロ大佐 が
「カタルーニャが独立?俺の死体を乗り越えて行くがよい!」
<http://www.publico.es/espana/441620/la-independencia-de-cataluna-por-
encima-de-mi-cadaver>と 発言した。これはもしカタルーニャが独立の動きを始
めたら軍が武力で鎮圧するという意味だが、それは新たな軍事クーデターをも示
唆する発 言である。こうして経済危機は政治危機につながっていく。
おそらくいま筆者の目の前にあるのは*腐敗し崩壊していく国家の姿*なのだろ
う。バスク州でも、末期癌 のETAテロリストの釈放を求めて激しい運動が起
こり、中央政府は今までではとうてい考えられなかった柔軟な姿勢を見せ釈放を
認める方針を発表した
<http://politica.elpais.com/politica/2012/09/11/actualidad
/1347366634_518448.html>。 彼らはバスクの反発と分離の動きを心底恐れてい
るのだ。その一方でマドリッドを中心に「ラホイ政権の軟弱な姿勢」に対して
轟々たる非難の 声もまた響いてい る。さらに少数民族地域だけではなく、従来
からフランコとその末裔たちに忠実に付き従ってきたガリシアやエクストレマ
デゥーラ、アストゥ リアスなどの地域 でも、国民党政府に対する反発が強まり
与党国民党内部でも亀裂が広がりつつある。
こういった*経済的な危機から政治的な弱体化に続く道*は、ある意味で*スペ
インの「自 業自得」*なのだが、先ほども申し上げたとおり、国家の機能を破壊
し国家を通さずに直接に*その社会 全体を私物化しようとする巨大資本によって
ねじふせられた*一面もあることを忘れてはなるまい。これについては次回 に実
例を挙げてご説明しよう。
*●「死にいたる病」*
「死にいたる病」という言葉があるが、おそらくそれは「病そのもの」を指す
ものではなく、「*病根」を見ずに「症状」だ けを抑えようとする人間の愚か
さ*に ついて述べるものなのだろう。危機が叫ばれ始めて以来のスペイン政府は
「血だ!血が足りない!血が無くなる!血をくれ!」と叫び続ける病 人のよう
である。 しかしその原因が心臓にあるのか、血管にあるのか、体のどこかに開
いた傷にあるのか、それとも造血作用のほうにあるのか、…、そんなこと は全く
意識に無 い。とにかく「出血を止めなくっちゃ!」とばかりに、血液の必要な
組織や細胞に続く動脈を縛り付け栓をし、どうでもよいような小さな傷に 強力
な絆創膏をべ たべたと身動きの取れなくなるまで貼りつづけるのだが、そうす
ればするほど体中の組織と細胞に貧血状態が強まり壊死が次々と広がってい
る。ちょうどこんな 具合だ。
もちろん「血が足りない」ことを知った時点ですでに手遅れであり、緊急輸
血、つまりEUと欧州中銀による資金注入は、単なる時間稼ぎに 過ぎない。
しょせんどうあがいても助かりようが無いのだが、少なくとも、経済の「病根」
についての意識と見識を持っていたのなら、こんな 「病」に冒される ことなど
最初から無かったはずだ。日本人である筆者としては、1980年代後半以後の
日本の愚かな経験から学んでほしかったのだが…。こ うして、*手遅れになって
もなおその原因に気づかないような在り方そのものが、手遅れの事態を招いた*
の である。それがこの国の「原罪」なのだろう。(東アジアに生まれ育った私
としては、キリスト教的な「原罪」よりも、仏教の言葉を借りて 「貪・瞋・痴
(とん・じん・ち)の三毒」を言ってみたい気がするが、哲学を語るつもりもそ
んな能力も無いので止めておく。)
言ってみれば、スペイン国民と国家指導者たちはいいようにカモにされたの
だ。確かにアスナールはネオリベラル経済の信奉者でネオコン追随 者だった。
しかし 元々彼の経済政策はフランコ独裁政権時代からあったオプスデイの路線
の延長上にあり、彼は同時に強烈な国家主義者だった。米国でのネオコ ンの台
頭を見てそ の路線に擦り寄って以来そこから離れることはないのだが、いま彼
の頭の中に「偉大な統一スペイン」の姿は残っているのだろうか?
そして2000 年の総選挙で彼の国民党に絶対多数を与えたスペイン国民と
財界は、バブルがいずれ崩壊する道理すら思い浮かばず、熱病の幻覚の中で目先
の ユーロに踊らされ た挙句に全てを失った。そして再び2011年の総選挙で
国民から絶対多数を与えられたアスナールの後継者たちは、詐欺師たちによって
見捨 てられた国家の形 骸にしがみつき、欧州中銀や米国巨大資本の番頭となる
以外を考える頭脳を持たない。彼らは自分たちを選んだ国民に詐欺の被害を押し
付け、 詐欺師の側に立っ て生きる道を選んだのである。こうしてスペイン国民
の多数派は二重にカモにされてしまった。
この8月31日にスペイン政府はEUの圧力を受けて「バッドバンク」つまり
不良 債権処理のための機構を作る決定をした <http://www.publico.es/441581>
の だが、これが決定的にスペイン社会を二分化していくだろう。中小の金融機
関は整理されていくつかのメガバンクにまとめられ、さらに世界的 な金融・投
資機関 に系列化されるし、各企業はその傘下に配置されることになる。そして
その上部構造とそれを取り巻く者たちによる上流社会とそれに連なる中 流社会
が再編成さ れるだろう。そしてカモたる大多数派の人民の肩には負債のツケが
いつまでも背負わされることになる。抜け殻と化した国家機構にとって、巨 大
資本による社会 の全面的・直接的な支配の道具以外の機能は許されない。それ
はもはや国家とは呼べない代物である。国家の解体は中東やアフリカ諸国だけで
起こっているわけ でもなく、また武力を用いてのみ行われるものでもないのだ。
2000年代になってこの国を襲ったバブルの熱病以来の過程は資本と国家に
よる二重 の詐欺だった。ちょうど1980年代後半以降に日本を襲い続けてい
るものと同じようにである。スペインにもし「よみがえり」があるとすれ ば、
スペインのカ モの群れが自ら学んで賢くなるとき以外にありえないだろう。
(2012年9月11日 バルセロナにて 童子丸開)
シリーズ: 『スペインの経済危機』の正体
* **(その1)スペイン:危機と 切捨てと怒りのスパイラル
【Socialist Review誌記事全訳】
* <http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-a_spiral_of_crisis.html>*
**(その2) 支配階級に根を下ろす「たか りの文化」
* <http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-2-ruling_class.html>*
**(その3-A)バブルの狂宴:スペイン中 に広がる「新築」ゴースト
タウン
*
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-3a-newly_constructed_gohst-town_in_whole_Spain.html>*
(その3-B) バブルの狂宴が終 わった後は
<Spain-3b-the_end_of_the_bubble.html> (その4) 「銀行統合」
「国営化」「救 済」の茶番劇
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-4-ridicule_resque_of_banks.html>
(その5) 学校を出たらそこは暗闇
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-5-nightmare_after_graduation.html>
(その6) 「危機」ではない!詐欺だ!
(その7) 狂い死にしゾンビ化する国家(予定)*
********************************************************
(以上、転載終わり、(その7)へつづく)
つも長文で申し訳ないのですが、お時間が取れましたらお読みくださ い。もし
価値があるとお感じになりましたら、ご拡散をよろしくお願いします。
なお、911事件の11周年については、私としては昨年の10周年に作成した
次のもので十分だと思っておりますので、何も新たな文章は出しませ ん。
いま我々が 生きている虚構と神話の現代
http://doujibar.ganriki.net/evidences_abandoned_for_ten_years.html
2012年9月11日 バルセロナにて
童子丸開 拝
********************************************************
サーバーの仕様のため、サイトへのアップや変更の反映が遅れ る場合がありま
す。1~2日、お待ちください。
http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-6-not_crisis_but_swindles.html
シリーズ: 『スペインの経済危機』の正体(その6)
*「危機」ではない!詐欺だ!*
*●小さな実例に現れるシロアリどもの手口*
全国紙プブリコが2012年7月21日付の記事で伝えた次の事実
<http://www.publico.es/439870/banez-quiere-pagar-4-7-millones-por-un-
trabajo-que-costo-2-2-en-2011>をご紹介することから 始めよう。
スペインの雇用・社会保障省(大臣はファティマ・バニェス)は6月13日
に、ある政府通達文書を印刷し全国の事務所や工場、商店、役所な どに郵送す
る作業 を民間業者に委託した。この政府通達文書とは、単に「トイレでの禁煙
徹底」を命じるだけの内容なのだが、問題はその費用である。
政府の通達文書を印刷して郵送する作業は1993年から民間業者に委託され
ているのだが、この「トイレ禁煙文書」の業務は最初は 2009年1月にある
業者が約*65万ユーロ*(約6500万円)で請け負った。ちょうど不動産バブ
ルが はじけて建設業を中心に失業が広がり不況の様相が具体的に現れ始めてい
た時期だった。
その2年後の2011年2月に、サパテロ社会労働党政府は他の業者に*全く
同じ作業に220万ユーロ*(約 2.2億円)*を支払った*。それは失業率が
20%に近づき公的債務が急上昇して社会福祉が大幅に削減さ れようとしてい
たときだった。
そしてその1年半後、大銀行を救うために血税がつぎ込まれたあげく事実上の
国家破産状態となり、公的部門の労働者が大量に解雇され公務 員のボーナス全
面カットが決定されたというときに、ラホイ国民党政府は、この*65万ユーロ
で済む作業に470万ユーロ*(約 4.7億円)*の予算を組んだ*のである。
これがこの国で行われる公金横領の手口の一端だが、一事が万事、すべてこ
の調子である。スペイン政府は一方で「カネが無い、カネが無い」 と叫んで低
賃金勤 労者の生活を滅多切りにしているのだが、その一方でこうやって多額の
公金を「行方不明」にさせる。もっとも、危険なばかりで糞の役にも立 たない
「もん じゅ」などという施設に何兆円もつぎ込み続ける日本国政府よりはまし
かもしれないが。(いやいや、「糞の役にも立たない」などと言うと糞 に叱ら
れる。人間や動物の糞は従来から人間の食生活と命を支えてきた
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/unko.html>の だ。)
これは一部の公務員による内部告発なのだが、プブリコによると、どうやら
官僚と政治家と業者の間に「禁煙」をネタにしたある種の「カルテ ル」が作ら
れてい るようだ。納税者(合法的に在住する外国人を含む)の税金にたかるシ
ロアリ集団にとっては、あらゆる名目がたかりのネタになりうる。
スペインで は2005年以来、社会労働党政権によって建築物内での喫煙の
禁止が段階を追って実施された。マスコミを動員して肺癌や受動喫煙の害を印
象付ける反タバ コ・キャンペーンに続いて、2007年に個人の住居と小規模
なレストランやバル(カフェ)を除くあらゆる建築物の内部での喫煙が法律に
よって禁止された。 そして前述のようにサパテロ政権が65万ユーロで済む作
業に220万ユーロをばら撒く直前(2011年1月)に、この禁煙法は強化さ
れ た。それによると、 個人の住居を除く全ての建築物内での喫煙が禁止され
る。ホテルだけは例外的に客室の30%までを喫煙可能にできるが、他の部屋と
厳しい基 準に従って隔離さ れていなければならない。
こうしてスペイン中で喫煙可能な場所が厳しく制限されたのだが、一方で歴代
政府による「トイレ禁煙文書」が作った「差 額」がどこに消えたのか誰も知ら
ない。法律による喫煙の制限はヒトラーのナチス政権が最初と言われるが、この
種の措置には鼻もひん曲がる 悪臭が漂う。これ に比べるとタバコの臭いなどさ
したる問題でもあるまい。
もう一つ、2012年7月24日付のエル・ムンド紙
<http://elmundo.orbyt.es/2012/07/23/elmundo_en_orbyt/1343070715.html>に
よって知らされた事実を見 てみよう。
このシリーズの(その1)
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-2-ruling_class.html>で 書い
たとおり、現スペイン国王フアン・カルロス1世の娘婿であるパルマ公イニャー
キ・ウルダンガリンは大掛かりな公金横領事件で裁判中の 身となっている。 そ
のウルダンガリンが主催するノース財団は、2005年と2006年にマジョル
カ島でスポーツ振興のためのイベントを行った。それは*そ れぞれ120万ユー
ロ*(当時のレートで2億円ほど)を使って行われ、2回分で240万ユーロの
出費だったのだが、 その資金は全てバレアレス州の公金だった。
ところが今年になってバレアレス州が同じ内容で同じ規模で行ったイベントの
費用は*わずか8万ユーロ*、 つまり*ノース財団が使った金額の15分の1*
<http://www.lavozlibre.com/noticias/ampliar/618994/baleares-hace-otro-
congreso-igual-al-de-noos-pero-15-veces-mas-barato>*だっ た*のである!
つまり、ウルダンガリンとその取り巻きグループ(国民党の地方政治家を含む)
によって使用された*公 金の15分の14*が、あれやこれやの名目を付けた請
求書と引き換えに、シロアリどもの個人資産へと消えたことにな る。この件は
現在公判中なので、ひょっとするとその一部くらいは明らかにされるのかもしれ
ない。
*●シロアリの巣・・・金融・投資機関*
いま取り上げた二つの例はほんの小さな事実に過ぎないのだが、これらを単に
個人あるいは小集団の道徳的退廃などのせいにすることは決定 的に誤ってい
る。このシリーズで明らかなように、国家と社会全体の構造に関わるものだ。*
数匹のシロアリの姿を見たならそ の付近に大規模なシロアリの巣があると確信
できる*だろう。実際に、スペインだけではなく欧州各地域には歴史的に形 成さ
れてきた巨大なシロアリの巣が存在する。これは陰謀論でも何でもなく現実であ
り、このシリーズでお目にかけたスペインのコソ泥どもの 背後には*「国境なき
大泥棒」の集団*が存在している。その点については*このシリーズの 最終回
(その7)*でもう少し詳しく述べてみたい。
2012年8月31日付のスペイン各主要紙は、*この年の**前半6ヶ月だけ
でおよそ2200億ユーロ(約22兆円)もの資金が*
<http://www.publico.es/dinero/441587/la-salida-de-capitales-de-espana-
suma-219-817-millones-hasta-junio>*スペインの銀行から引き揚げられた*こと
を報じている。これはスペイン中央銀行のデータ
<http://www.bde.es/webbde/es/estadis/infoest/a1701.pdf>によるものだが、
1月から3月ま での上四半期に逃避した資金が約970億ユーロ
<http://www.abc.es/20120531/economia/abci-salida-capitales-espana-llego-
201205311126.html>だから、それ以 降の危機の進行、特にバンキア銀行の事実
上の倒産が猛烈な資本の引き揚げを招いたことが明らかになる。エル・パイス紙
によれば
<http://economia.elpais.com/economia/2012/08/31/actualidad
/1346402710_181010.html>、前年2011年の6月末段階でス ペインの銀行の
収支バランスは約225億ユーロの黒字であり、その後*1年の間に3156億
ユーロ(約31兆5千億円)が スペインから逃げていった*。ただしこれらの数
字は、スペイン財政の破綻が明らかになって以降の資本逃避の一部に過 ぎな
い。バブル経済の最中に引っかき集められてタックスヘイブンなど国外に移送さ
れた資産を加えるなら、どれほどの資金がこの国から離れ ていったのか、想像
もつかない。
もちろん「沈むかける船」に留まる馬鹿なネズミがいるわけもないのだが、し
かし逆の側から見ると、ロクな自前の産業基盤を持たないスペ インのような国
に、これほどに大量の資金が流れ込んでいたこと自体が驚きであろう。実際に
(その1)
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-a_spiral_of_crisis.html>の
Socialist Review誌記事の訳でもご紹介したとおり、*21世紀の最初の数年
間、スペインは欧州の中でも最も熱気にあふれた投資 の場だった。*いったいど
うしてそんなことになるのか。
1990年代末ごろから、特に*2002年のユーロ導入以降*なのだが、国や
自治体は民間の土建業者と 手を組んで、まるで何かにとりつかれたように飛行
場、鉄道、高速道路、工場団地、港湾設備などの*ろくに使われもしないイ ンフ
ラの整備*にまい進した。民間業者は開発許可を簡単に手に入れて*広大な「ゴー
ストタウン」*を 作り続けた。スペインの銀行は、中小の貯蓄銀行(カハ、地方
によってはカシャ、カイシャと呼ばれる)を含めて、土木・建築工事に*資 金を
滝のようにつぎ込んだ*。その過程と結果については(その3A)
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-3a-newly_constructed_gohst-
town_in_whole_Spain.html>、(その3B)
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-3b-
the_end_of_the_bubble.html>でご紹介したとおりである。そのうえに*想 像を
絶する規模で公金略奪の手段とされただけの数多くのイベント*が組まれた。当
時のアスナール政権はスペインを 延々と続く「右上がり経済」の幻覚の中に放
り込み、2004年以後のサパテロ政権もまたバブル経済の掌で踊り続けた。
その間に銀行は、本来なら融資を躊躇しなければならない人々にまで、*言葉
巧みに「ばら色の生活設計」を吹き込んで頭金 なし・低金利の住宅ローンを組
ませた*。これは当時の米国でのいわゆるサブプライムローンと同様のやり口な
のだが、 住宅ばかりではなく自動車や高級家具、高級家電製品にいたるまで、*
数字に弱く無計画な人々の生活を銀行ローンが縛り付け ていった*の である。
さらに、英国人、ドイツ人、フランス人たちが、欧州の中では格段に安かったス
ペインの不動産をさかんに買いあさり、住宅価格は急 上昇した。バルセ ロナな
どの都市の集合住宅でも、「高く売れる」と分かった家主たちが賃貸しをやめて
部屋を売り物件に変えたために、貸し物件が不足し家賃 もまた高騰した。 同時
にユーロ導入時の便乗値上げと後の原油価格の上昇もあって、この間にありとあ
らゆる物価が上がり続けたのである。
そして国家と国民の全体を巻き込んだこの狂乱は、米国で起こったと同様に、
そしてかつて日本で起こったと同様に、*銀行 の大掛かりな経営破たん*を引き
起こした。そしてスペインの銀行を突っ走らせた外国資本は、*多額の 「戦利
品」を懐に収めた挙句に借用書だけを残して立ち去った*というわけである。私
の「シリーズ:515スペイン大衆反乱 15M
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spanish_5-15_movements-01.html>」
でお知らせし たように、いま人々は「シロアリの巣」がどこにあるのか気づき
始めている。
もちろんだがそれは、ポール・グレイグ・ロバーツが示したように
<http://doujibar.ganriki.net/webspain
/Bankers_have_seized_Europe.html>、*ゴー ルドマンサックスなどの金融機関
とそれを後ろ盾にする格付企業等の企業群*であり、その「窓口」*欧 州中銀と
IMF*である。スペインのマスコミの中ではわずかにプブリコ紙だけが、ゴー
ルドマンサックスを取り上げて「危機が国際企業を太らせる」と指摘
<http://www.principiamarsupia.com/2012/09/03/como-goldman-sachs-creo-
una-crisis-alimentaria-internacional/>している。(そんなマスコミがあるだ
け日本よりマシか…。)ネオリベラル経済は単なる略奪経済であるだけではな
く、日本を狙うTPPの素顔
<http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2012/08/tpp-dec7.html>からも分か
るように、*巨 大資本による世界の私的で直接的な統治*を目指すものである。
それは*法も国家も超越した権力*な のだ。EUはその格好の「餌場」と化して
しまった。そしてスペインはいまの「経済危機」を通して、いずれ隅々まで巨大
資本の私有物に成り 果てるのかもしれない。
ドイツや北欧諸国のような国家と社会に対するしっかりした理念を持たず制度
的にもスキだらけの南欧諸国が、最初にそのターゲットになっ てしまっ
た。*2007年まで散々にこの国の狂乱経済を踊らせ続けたバブルの熱病は、
国の指導者だけではなく、産業界、官 僚機構、マスコミ、学術界、そして下々
の庶民にいたるまで社会の全体に感染*し、ただでさえタガの外れた金銭感覚と
貧弱な数字感覚しか持たないスペイン人の社会を打ち砕いていった。このシロア
リどもに食い荒らされた国家を支えるものは、もはやどこにも 無いだろう。
*これはもう詐欺としか言いようがあるまい。
*
*●ただいま崩壊中の国家と社会*
2000年代になってスペインでは「にわか金持ち」が街頭にあふれた。正
確には「ちょっと財布が膨んだので金持ちの仲間入りができたと思 い込んだ貧
乏人」 と言うべきだろう。そして彼らの多くが2007年以降、見る見るうち
に貧乏人に戻っていった。しかも、給料を下げられ、あぶく銭の臨時収 入を失
い、一部は 仕事を失い、高級自家用車を手放し、10年間で1.5~2倍に上
がった物価と情け容赦も無い消費税アップを前に何を買う意欲も失い、一部 の
不幸な者たちは 家賃もローンも払えずに自宅を失い、結局は以前よりもずっと
惨めな境遇に堕ちた自分と対面せざるを得なかったのである。以前の「貧乏」と
は全く異質の貧困 が彼らを待ち構えていた。《帰ってみればこはいかに!元いた
家も村も無く・・・》。浦島太郎は日本の御伽噺だけではない。
社会福祉団体カリタスの調べによると
<http://elpais.com/diario/2011/07/07/sociedad/1309989601_850215.html>、
現在スペインでは総人口の 20.8%(およそ1000万人)が貧困層であ
り、140万世帯で家族メンバーの誰一人として職に就くことができない。加え
てそれ以外 に、約50万世帯が失業保険や緊急の政府援助などの絵支援も途絶
え全く無収入の状態に置かれている。エル・ペリオディコ紙によると
<http://www.elperiodico.com/es/noticias/sociedad/mas-dos-millones-
espanoles-pasan-hambre-diario-1043728>、 2011年7月の段階ですでに
235万人が毎日飢えを感じ、国民の46%が食生活の質と量を落としていたの
だ。2012年9月からは、 EU、欧州中銀、 IMFのトロイカの命令に基づ
いて、消費税が大幅に引き上げられた。同時に公共輸送運賃、電気代、ガス代も
値上げされた。必死に倹約と我 慢を続ける国民の 努力にも、じきに限界が訪れ
るだろう。
スペイン政府はこんな状況をもたらした元凶である銀行を「救済する」ため
に、まず*教育、つまり将来の国家を支えるべき 人材の育成を切り捨てて*い
る。2011年4月以降の1年間で教育にかける費用は21.9%も削られた
<http://www.elmundo.es/elmundo/2012/04/03/espana/1333453157.html>。さら
に基礎的な科学研究の予算も25%削減
<http://www.elmundo.es/elmundo/2012/04/03/ciencia/1333450876.html>され
た。続いて*国 民の健康な身体を支える医療を切り捨てる*。2012~13年
度の予算からは保健医療の13.7%(70億ユーロ)が消えてなくなった
<http://www.elmundo.es/elmundo/2012/04/09/espana/1334000045.html>。これ
らの数字は今後も増え続けることだろう。要するにこの国の指導者は国の未来を
捨てたのだ。*彼ら の頭にあるのは、カネだけがあって人のいない「国」*である。
2012年5月14日にスペイン第2の銀行BBVA幹部は「現在の経済危機
はリーマンブラザーズ倒産時よりも深刻だ」という
<http://economia.elpais.com/economia/2012/05/14/actualidad
/1336995907_924156.html>認 識を示した。当然だ。サブプライムローンの焦げ
付きに端を発したリーマンブラザーズ倒産は、確かに米国と欧州の経済を激しく
揺り動かした が、それでも米国 の政治と経済はそのショックを直接に国家の破
滅にまで直結させないだけの分厚さを持っていた。しかしスペインは全く異な
る。上っ面の1枚 をはいだらそこに は何も残っていない。その上っ面の1枚を
支えていた外国からの投資はいっせいに引き上げられてしまった。放っておけば
この国の債務不履行 は避けられず、そ れはユーロ圏だけではなく欧州全体の崩
壊に結びつきかねない。それを防ぐ手段として*EUはIMFと共に欧州中銀に
よるス ペインの金融機関の直接統治を推し進める*作業に努めている。
当シリーズ(その4)
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-4-
ridicule_resque_of_banks.html>で 明らかにしたとおり、2012年6月、ス
ペイン救済とユーロ崩壊への対策としてドイツのメルケルが打ち出した雇用の創
出を柱とする「成長 策」は、欧州中銀 のマリオ・ドラギとイタリア首相のマリ
オ・モンティ(ともにゴールドマンサックスの関係者)の激しい抵抗に遭って頓
挫し、スペイン政府は 「即効性」を求め て、彼らの唱える銀行への直接の救済
路線に乗った。こうして、スペイン政府は*自力の経済健全化の可能性といっ
しょに国家 の主権を投げ捨てた*のである。結果として国は分裂し、その国民は
文字通りの「棄民」と成り果てるほかにはあるま い。
スペイン国内でいまカタルーニャの独立意識が階層や党派を超えて不自然なほ
ど急激に盛り上がりつつある
<http://www.publico.es/espana/441995/el-independentismo-crece-entre-los-
partidos-y-movimientos-catalanes>。公的な医療・厚生機関への給料遅配に
陥っているカタルーニャ州政府は先日、マドリッドの中央政府に50億ユーロの
資金援助を要請した
<http://www.publico.es/espana/441465/catalunya-pide-5-023-millones-como-
rescate-y-dice-que-no-aceptara-condiciones-politicas>ば かりだ。しかしそ
れは逆にカタルーニャ人のマドリッドに対する反感を強める結果となっている。
この9月11日、「カタルーニャの日」にバ ルセロナで行われた独立要求のデ
モには、主催者発表で200万人、市交通警察の発表で150万人が集まり、
<http://www.elperiodico.com/es/noticias/diada-2012/manifestacion-diada-
barcelona-2202293>市の中心部一帯の大通りを数時間にわたって埋め尽くした。
この種のデモや集会を常に極端に過小評価する国家警察ですら 「60万人が参
加した」ことを認めざるを得なかったのだ。
カタルーニャだけではなく、スペインにある17の自治州はそれぞれに借金を
背負い財政破綻寸前の状況にあり、その多くが国の「自治体救 済基金(FLA:
Fondo de Liquidez Autono'mico)」からの資金援助を申請しなければならない
状態である。その中でマドリッド、ガリシア、ラ・リオハの3つの州は中央政府
からの資金借り入れの予定が無い
<http://politica.elpais.com/politica/2012/09/04/actualidad
/1346788531_370011.html>。つまり、今までさしたる赤字なしで州の運営を行っ
てきたということだが、なんとも腑に落ちない。バレンシアを除いて スペイン
の中で公金略奪の最も激しいと思われる地域がマドリッドとガリシアだからだ。
かつての独裁者フランシス・フランコによって最大限に権威付けられたマド
リッド州とマドリッド市は現在の国政与党国民党の牙城であり、ま たガリシア
はその フランコ、最後のフランコ政権閣僚で国民党創設に力を尽くして今年死
去したマニュエル・フラガ、そして現首相マリアノ・ラホイの出身地で ある。
歴史的にま ともな工業生産を行ったことの無いマドリッドにはスペイン中から
の税金と資金が集中する。また伝統的な1次産業と観光以外にろくな収入源 を
持たないガリシ ア州の豪華なインフラ整備が大規模な国庫補助によって支えら
れてきたことは言うまでも無い。
民族意識の高いカタルーニャ人たちの間では、工業化 の進んだカタルーニャ
の資金の多くが中央政府に吸い上げられてマドリッドやガリシアにばら撒かれ、
フランコの子分とその取り巻きどもの懐 を潤し続けている と信じる者が多い。
そして州政府が頭を下げて中央政府からの借金をお願いするような事態に、カタ
ルーニャ人たちの苛立ちは爆発寸前になっ ている。
一方、EUではバロッゾ委員長自ら、「仮定での話」という注釈つきではある
が、史上初めて「カタルーニャ独立」とその「国際的な承認」についての発言
<http://www.elperiodico.com/es/noticias/politica/bruselas-habla-
independencia-catalunya-2195069>を 行った。9月11日にはEU本部は「仮
にカタルーニャが独立したとしても、直ちにEUに加われるわけではなく、正式
な申請をしなければならない」
<http://politica.elpais.com/politica/2012/09/11/actualidad
/1347366634_518448.html>と釘を刺したのだが、それにしても、カタルーニャ独
立、つまりスペインの分裂を念頭に置いた発言であり、大いに注目さ れる。カ
タルーニャ人たちは以前からスペインからの独立に対するEUの役割に期待し、
「スペインの中のカタルーニャ」ではなく「欧州の中の独立国家カタルーニャ
<http://www.11s2012.cat/>」の声が高まる。
マドリッド政府も内心その点を非常に恐れていると見えて、国庫資金借り入れ
に際してカタルーニャ州政府が出した「政治的な条件を一切付けるな」という要
求
<http://eldiadigital.es/not/62110
/cataluna_pide_un_rescate_pero_se_niega_a_aceptar_cualquier_condicion_politica
/>に 対して、ただ「負債を減らす努力をしてくれればよい」と答えたのみだっ
た。「政治的条件」を付けたとたんに何が起こるか、中央政府は十分 に理解で
きたので ある。この状況に、いまだフランコ主義が根強く残る軍内部で激しい
危機感が起こっている。8月末にフランシスコ・アラマン・カストロ大佐 が
「カタルーニャが独立?俺の死体を乗り越えて行くがよい!」
<http://www.publico.es/espana/441620/la-independencia-de-cataluna-por-
encima-de-mi-cadaver>と 発言した。これはもしカタルーニャが独立の動きを始
めたら軍が武力で鎮圧するという意味だが、それは新たな軍事クーデターをも示
唆する発 言である。こうして経済危機は政治危機につながっていく。
おそらくいま筆者の目の前にあるのは*腐敗し崩壊していく国家の姿*なのだろ
う。バスク州でも、末期癌 のETAテロリストの釈放を求めて激しい運動が起
こり、中央政府は今までではとうてい考えられなかった柔軟な姿勢を見せ釈放を
認める方針を発表した
<http://politica.elpais.com/politica/2012/09/11/actualidad
/1347366634_518448.html>。 彼らはバスクの反発と分離の動きを心底恐れてい
るのだ。その一方でマドリッドを中心に「ラホイ政権の軟弱な姿勢」に対して
轟々たる非難の 声もまた響いてい る。さらに少数民族地域だけではなく、従来
からフランコとその末裔たちに忠実に付き従ってきたガリシアやエクストレマ
デゥーラ、アストゥ リアスなどの地域 でも、国民党政府に対する反発が強まり
与党国民党内部でも亀裂が広がりつつある。
こういった*経済的な危機から政治的な弱体化に続く道*は、ある意味で*スペ
インの「自 業自得」*なのだが、先ほども申し上げたとおり、国家の機能を破壊
し国家を通さずに直接に*その社会 全体を私物化しようとする巨大資本によって
ねじふせられた*一面もあることを忘れてはなるまい。これについては次回 に実
例を挙げてご説明しよう。
*●「死にいたる病」*
「死にいたる病」という言葉があるが、おそらくそれは「病そのもの」を指す
ものではなく、「*病根」を見ずに「症状」だ けを抑えようとする人間の愚か
さ*に ついて述べるものなのだろう。危機が叫ばれ始めて以来のスペイン政府は
「血だ!血が足りない!血が無くなる!血をくれ!」と叫び続ける病 人のよう
である。 しかしその原因が心臓にあるのか、血管にあるのか、体のどこかに開
いた傷にあるのか、それとも造血作用のほうにあるのか、…、そんなこと は全く
意識に無 い。とにかく「出血を止めなくっちゃ!」とばかりに、血液の必要な
組織や細胞に続く動脈を縛り付け栓をし、どうでもよいような小さな傷に 強力
な絆創膏をべ たべたと身動きの取れなくなるまで貼りつづけるのだが、そうす
ればするほど体中の組織と細胞に貧血状態が強まり壊死が次々と広がってい
る。ちょうどこんな 具合だ。
もちろん「血が足りない」ことを知った時点ですでに手遅れであり、緊急輸
血、つまりEUと欧州中銀による資金注入は、単なる時間稼ぎに 過ぎない。
しょせんどうあがいても助かりようが無いのだが、少なくとも、経済の「病根」
についての意識と見識を持っていたのなら、こんな 「病」に冒される ことなど
最初から無かったはずだ。日本人である筆者としては、1980年代後半以後の
日本の愚かな経験から学んでほしかったのだが…。こ うして、*手遅れになって
もなおその原因に気づかないような在り方そのものが、手遅れの事態を招いた*
の である。それがこの国の「原罪」なのだろう。(東アジアに生まれ育った私
としては、キリスト教的な「原罪」よりも、仏教の言葉を借りて 「貪・瞋・痴
(とん・じん・ち)の三毒」を言ってみたい気がするが、哲学を語るつもりもそ
んな能力も無いので止めておく。)
言ってみれば、スペイン国民と国家指導者たちはいいようにカモにされたの
だ。確かにアスナールはネオリベラル経済の信奉者でネオコン追随 者だった。
しかし 元々彼の経済政策はフランコ独裁政権時代からあったオプスデイの路線
の延長上にあり、彼は同時に強烈な国家主義者だった。米国でのネオコ ンの台
頭を見てそ の路線に擦り寄って以来そこから離れることはないのだが、いま彼
の頭の中に「偉大な統一スペイン」の姿は残っているのだろうか?
そして2000 年の総選挙で彼の国民党に絶対多数を与えたスペイン国民と
財界は、バブルがいずれ崩壊する道理すら思い浮かばず、熱病の幻覚の中で目先
の ユーロに踊らされ た挙句に全てを失った。そして再び2011年の総選挙で
国民から絶対多数を与えられたアスナールの後継者たちは、詐欺師たちによって
見捨 てられた国家の形 骸にしがみつき、欧州中銀や米国巨大資本の番頭となる
以外を考える頭脳を持たない。彼らは自分たちを選んだ国民に詐欺の被害を押し
付け、 詐欺師の側に立っ て生きる道を選んだのである。こうしてスペイン国民
の多数派は二重にカモにされてしまった。
この8月31日にスペイン政府はEUの圧力を受けて「バッドバンク」つまり
不良 債権処理のための機構を作る決定をした <http://www.publico.es/441581>
の だが、これが決定的にスペイン社会を二分化していくだろう。中小の金融機
関は整理されていくつかのメガバンクにまとめられ、さらに世界的 な金融・投
資機関 に系列化されるし、各企業はその傘下に配置されることになる。そして
その上部構造とそれを取り巻く者たちによる上流社会とそれに連なる中 流社会
が再編成さ れるだろう。そしてカモたる大多数派の人民の肩には負債のツケが
いつまでも背負わされることになる。抜け殻と化した国家機構にとって、巨 大
資本による社会 の全面的・直接的な支配の道具以外の機能は許されない。それ
はもはや国家とは呼べない代物である。国家の解体は中東やアフリカ諸国だけで
起こっているわけ でもなく、また武力を用いてのみ行われるものでもないのだ。
2000年代になってこの国を襲ったバブルの熱病以来の過程は資本と国家に
よる二重 の詐欺だった。ちょうど1980年代後半以降に日本を襲い続けてい
るものと同じようにである。スペインにもし「よみがえり」があるとすれ ば、
スペインのカ モの群れが自ら学んで賢くなるとき以外にありえないだろう。
(2012年9月11日 バルセロナにて 童子丸開)
シリーズ: 『スペインの経済危機』の正体
* **(その1)スペイン:危機と 切捨てと怒りのスパイラル
【Socialist Review誌記事全訳】
* <http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-a_spiral_of_crisis.html>*
**(その2) 支配階級に根を下ろす「たか りの文化」
* <http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-2-ruling_class.html>*
**(その3-A)バブルの狂宴:スペイン中 に広がる「新築」ゴースト
タウン
*
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-3a-newly_constructed_gohst-town_in_whole_Spain.html>*
(その3-B) バブルの狂宴が終 わった後は
<Spain-3b-the_end_of_the_bubble.html> (その4) 「銀行統合」
「国営化」「救 済」の茶番劇
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-4-ridicule_resque_of_banks.html>
(その5) 学校を出たらそこは暗闇
<http://doujibar.ganriki.net/webspain/Spain-5-nightmare_after_graduation.html>
(その6) 「危機」ではない!詐欺だ!
(その7) 狂い死にしゾンビ化する国家(予定)*
********************************************************
(以上、転載終わり、(その7)へつづく)
2012年9月12日水曜日
原発ゼロを決めて、安心・安全な世界を目指す以外の道はない
世界平和アピール七人委員会が、あらたに「原発ゼロを決めて、安心・ 安全な世界を目指す以外の道はない」とアピールを発表し ました。
======以下、全文掲 載======
WP7 108J
■原発ゼロを決めて、安心・安全な世界を目指す以外の道はない
2012年9月11日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀、土山秀夫、大石芳野、
池田香代子、小沼通二、池内了、辻井喬
世界平和アピール七人委員会は、東京電力福島第一原子力発電所事故から4か月
を経過した昨年7月11日に「原発に未来はない:原発のない世界を考え、IAEAの役
割強化を訴える」と題したアピールを発表した。私たちはこのアピールで、原発
はやめられないのではないかと考え ている人たちに、真剣な検討を要望した。
東日本大震災から1年半の経過をみて、このアピールを再確認するとともに、再
び提言したい。
1.被災者たち
東日本大震災によって、一人ひとりの生活があり、多くの絆によって結ばれてい
た15870人が死去し、2846人が今なお行方不明になっている(人数は、2012年9月
5日警察庁発表による)。
事故の後、原発から20km以内は罰則付きで立ち入りが制限・禁止される「警戒区
域」に指定され、20~30kmの範囲は「避難指示区域」と決められるなど、避難を
余儀なくされた人は約15万人に及んだ。多くの住民が、東京電力と政府と“専門
家”の不誠実と無能な対応の結果、避けることができたはずの余 計な被曝を受
け、放射線障害への不安を生涯にわたってかかえることになった。
3.11事 故から1年半を経過し、力強く立ち上がっている人たちがいる一方で、
数多くの人たちが、仮設住宅その他の移転先で不便な生活を強いられ、 帰宅の
めども立た ず、将来の設計もできないままにされている。復興予算は、遺憾な
がら被災地と被災者が最も望む形では使われていない。配分について、根本 的
改善が急がれね ばならない。
世界平和アピール七人委員会は、いつまでも東日本大震災の被災者、特に東京電
力福島第一原発事故の被災者との連帯を 最優先に考えて、行動していく。
2.3.11原発事故の原因と経過の解明
民間、東京電力、国会、政府の事故調査報告書が相次いで発表され、多くのこと
があきらかになってきた。しかしいまだ 多くの非公表の情報があり、事故を起
こした4つの原子炉の内部の状態は高レベルの放射能汚染のため未だほとんどわ
からず、事故の原因と経過の全貌をつかめる状況 になっていない。
3.11の 事故は、人類史に残る出来事である。そこから得られる負の情報は、今
後ふたたび同様の事故を繰り返さないよう対策を講じるために不可欠で ある。
原子力基本 法の「基本方針」には、公開の原則がうたわれている。専門家の検
証に役立つアーカイブを設立し、利用に供することは、すべての関係者の責 務
である。その第 一歩として、民間、東京電力、国会、政府の事故調査の関係者
は最終報告書のみにとどまらず、資料一切を散逸させることなく保存していただ
きたい。
とくに東京電力は、自社にとって不利な情報をできるだけ非公開にしようとして
いるが、ことの重大性を自覚し、真実を すべて明らかにする責任を果たさなけ
ればならない。
私たちは、国会事故調査委員会の提言7にある、「国会に、原子力事業者及び行
政機関から独立した、民間中心の専門家からなる第三者機関として(原子力臨時
調査委員会(仮称))を設置」して、今回の事故調査で残された問題の解明を続
け、結果を発表していくという構想を支持する。
3.これからの道
福 島県の脱原発方針は、政府にも全国民にも受け入れられた。その他の日本全
国の原発についても、世論は明らかに廃炉に傾いている。政府は、 民主主義の
原則に 従い、福島県民を始めとする多くの人びとの思いを受け止めて、すべて
の原発の廃止を、あいまいさを残さずに期限を明示して決定しなければ ならな
い。この期 限は、それまでは運転してよいというものではなく、それ以前にで
きるだけ繰り上げて廃止していくという意味に理解すべきである。この点が 明
示されれば、議 論のための共通の基盤が実現し、廃止の手順、順序などについ
て建設的な協力が可能になると確信している。
こ れまで日本のエネルギー政策、原子力政策は、政府と官僚、財界と産業界、
学界、マスコミが一体となった“原子力ムラ“によって支配されて きた。”ムラ
“は”安全神話“を作り、事故に対する備えを怠ってきた。ところが責任の所在を
あいまいにして、誰も責任をとろうとしていない。3.11以後に、その弊害が明白
になったにもかかわらず、”ムラ“と原発の延命・維持の画策が後を絶たない。”
ムラ“の解体 は徹底しなければならない。
六ヶ所村再処理工場を維持するためや、核兵器製造能力維持のため、あるいは米
国の原子力産業のためなどといった本末 転倒な理由による原発維持の可能性は
完全に否定されなければならない。
これからは、決定責任の所在をすべて明確にしておく必要がある。万一今後も国
民の安全を無視した決定が行われるので あれば、これまでのように誰も責任を
とらないのでなく、結果責任を負っていただかなければならない。
大飯3,4号炉の再稼働は、今や見直しが必要なことが確認されている3.11以 前の
基準に基づいて、従来推進を最優先にしてきた組織が判断して決定したものだっ
た。住民の避難計画を作ることもなく、被害が及ぶ隣接県 の住民に納得して も
らえる説明をして了解を求めることもせず、地震対応の拠点となる免震事務棟の
設置もしないまま、さらに原発に近すぎて機能しないことが 明らかなオフサイ
トセンター(緊急事態応急対策拠点施設)の移転も行わないなど、基本的な安全
対策の不備のまま“安全”が確認されたとして、強行された再 稼働なので、直ち
に運転を停止すべきである。
原子力規制委員会の委員人事は、国の原子力政策、ひいては政治が、国民の信頼
を回復できるか否かの岐路に立っている ことを示す重大な問題である。私たち
は、これまで原子力推進にかかわってこなかった人の中から、視野が広く将来を
見据えて判断できる人を 選ぶべきだと考える。
世界の原発数は、スリーマイル島原発事故のあとで伸びが小さくなり、チェルノ
ブイリ事故のあと増加が止まった。福島 原発事故のあった2011年には新設4基、
廃炉決定11基であり、2012年初めの原発は、前年より減少し29か国、427基と
なった。世界の大多数の国々は原子力に依存しないエネルギー政策を採用してい
るのである。
世 界各国は、現在再生可能エネルギーの研究・開発・利用にしのぎを削ってい
る。世界最大の投資国は中国であり、ドイツと米国が続いている。 原発大国と
いわれ るフランスも日本より熱心である。日本では、原子力以外のエネルギー
資源の研究・開発・利用に制度上の制約を加え、貧困な予算措置しかし てこな
かったた め、世界の競争から大きく遅れてしまっている。私たちは、一刻も早
くすべての障害を取り除き、競争に参加しなければ、遅れはさらに広がる と危
惧している。
使用済核燃料と高レベル廃棄物は10万年以上管理しなければならないといわれ、
わが国では処分場の確保もできていない。
東日本大震災では、震源域の北米プレートが50m移動し、7m隆起した。宮城県で
は水平方向に5.3m、上下方向に1.2mの地殻変動が起こり、30分で東日本全体に変
動が波及した。4つのプレートが地下で接している地震国の日本において、1020
世 紀以後の子孫の時代にまで及ぶ負の遺産の安全な管理をすることは、現実性
があるとも健全であるとも言えない。しかも、新たな原発立地を得 ることはで
きず、 既存の原子力発電所の敷地内への原子炉増設も限界に達している。そし
て原発からの使用済核燃料と高レベル廃棄物の一時的な保管場所も不足 する。
原発利用は 行き詰る道を歩んでいるのである。
1950年 代後半に日本で初めて発電用原子炉の英国からの輸入を決めた時に、耐
震性やコストの問題とともに使用済核燃料と高レベル廃棄物処理のめど が立っ
ていないこ とが、日本学術会議の議論の中で指摘された。これに対して推進派
は「技術は、完成してから始めるのでなく利用を始めてからも進歩するもの
だ」と説明して、 批判を無視した。その後50年以上のあいだ基本的な核のライ
フサイクルができなかったのだから、この技術から撤退する以外ない。
原子力を縮小しゼロにすると、発電コストが上がり、電気料金の大幅値上げに
つながると いう議論がある。 これは、石油、天然ガスを毎日輸入する場合と核
燃料を数年間原子炉に入れたままにしておく場合のコストの比較に基づくもので
あり、建設、 解体、核廃棄物処 理、事故への対応、補償、賠償などのコストは
すべてを電気料金に含めることができない巨額になっている。原子力は決して安
くないことを忘 れてはいけない。
すべての原発は最終的に廃炉解体をしなければならない。とくに過酷事故を起こ
した原発の解体には多くの技術開発が不 可欠である。安全に解体を進めるため
の世界最先端技術の国際研究所を、たとえば福島県に設置し、世界に積極的に貢
献することを提案する。
世界平和アピール七人委員会は、ひとりひとりが不安を持つことなく安全に生き
ていくことが可能な世界をつくっていく ために日本が世界の先頭に立つことを
求める。
連絡先:世界平和アピール七人委員会事務局長 小沼通二
メール: mkonuma254@m4.dion.ne.jp
ファクス: 045-891-8386
URL: http://worldpeace7.jp
======以下、全文掲 載======
WP7 108J
■原発ゼロを決めて、安心・安全な世界を目指す以外の道はない
2012年9月11日
世界平和アピール七人委員会
武者小路公秀、土山秀夫、大石芳野、
池田香代子、小沼通二、池内了、辻井喬
世界平和アピール七人委員会は、東京電力福島第一原子力発電所事故から4か月
を経過した昨年7月11日に「原発に未来はない:原発のない世界を考え、IAEAの役
割強化を訴える」と題したアピールを発表した。私たちはこのアピールで、原発
はやめられないのではないかと考え ている人たちに、真剣な検討を要望した。
東日本大震災から1年半の経過をみて、このアピールを再確認するとともに、再
び提言したい。
1.被災者たち
東日本大震災によって、一人ひとりの生活があり、多くの絆によって結ばれてい
た15870人が死去し、2846人が今なお行方不明になっている(人数は、2012年9月
5日警察庁発表による)。
事故の後、原発から20km以内は罰則付きで立ち入りが制限・禁止される「警戒区
域」に指定され、20~30kmの範囲は「避難指示区域」と決められるなど、避難を
余儀なくされた人は約15万人に及んだ。多くの住民が、東京電力と政府と“専門
家”の不誠実と無能な対応の結果、避けることができたはずの余 計な被曝を受
け、放射線障害への不安を生涯にわたってかかえることになった。
3.11事 故から1年半を経過し、力強く立ち上がっている人たちがいる一方で、
数多くの人たちが、仮設住宅その他の移転先で不便な生活を強いられ、 帰宅の
めども立た ず、将来の設計もできないままにされている。復興予算は、遺憾な
がら被災地と被災者が最も望む形では使われていない。配分について、根本 的
改善が急がれね ばならない。
世界平和アピール七人委員会は、いつまでも東日本大震災の被災者、特に東京電
力福島第一原発事故の被災者との連帯を 最優先に考えて、行動していく。
2.3.11原発事故の原因と経過の解明
民間、東京電力、国会、政府の事故調査報告書が相次いで発表され、多くのこと
があきらかになってきた。しかしいまだ 多くの非公表の情報があり、事故を起
こした4つの原子炉の内部の状態は高レベルの放射能汚染のため未だほとんどわ
からず、事故の原因と経過の全貌をつかめる状況 になっていない。
3.11の 事故は、人類史に残る出来事である。そこから得られる負の情報は、今
後ふたたび同様の事故を繰り返さないよう対策を講じるために不可欠で ある。
原子力基本 法の「基本方針」には、公開の原則がうたわれている。専門家の検
証に役立つアーカイブを設立し、利用に供することは、すべての関係者の責 務
である。その第 一歩として、民間、東京電力、国会、政府の事故調査の関係者
は最終報告書のみにとどまらず、資料一切を散逸させることなく保存していただ
きたい。
とくに東京電力は、自社にとって不利な情報をできるだけ非公開にしようとして
いるが、ことの重大性を自覚し、真実を すべて明らかにする責任を果たさなけ
ればならない。
私たちは、国会事故調査委員会の提言7にある、「国会に、原子力事業者及び行
政機関から独立した、民間中心の専門家からなる第三者機関として(原子力臨時
調査委員会(仮称))を設置」して、今回の事故調査で残された問題の解明を続
け、結果を発表していくという構想を支持する。
3.これからの道
福 島県の脱原発方針は、政府にも全国民にも受け入れられた。その他の日本全
国の原発についても、世論は明らかに廃炉に傾いている。政府は、 民主主義の
原則に 従い、福島県民を始めとする多くの人びとの思いを受け止めて、すべて
の原発の廃止を、あいまいさを残さずに期限を明示して決定しなければ ならな
い。この期 限は、それまでは運転してよいというものではなく、それ以前にで
きるだけ繰り上げて廃止していくという意味に理解すべきである。この点が 明
示されれば、議 論のための共通の基盤が実現し、廃止の手順、順序などについ
て建設的な協力が可能になると確信している。
こ れまで日本のエネルギー政策、原子力政策は、政府と官僚、財界と産業界、
学界、マスコミが一体となった“原子力ムラ“によって支配されて きた。”ムラ
“は”安全神話“を作り、事故に対する備えを怠ってきた。ところが責任の所在を
あいまいにして、誰も責任をとろうとしていない。3.11以後に、その弊害が明白
になったにもかかわらず、”ムラ“と原発の延命・維持の画策が後を絶たない。”
ムラ“の解体 は徹底しなければならない。
六ヶ所村再処理工場を維持するためや、核兵器製造能力維持のため、あるいは米
国の原子力産業のためなどといった本末 転倒な理由による原発維持の可能性は
完全に否定されなければならない。
これからは、決定責任の所在をすべて明確にしておく必要がある。万一今後も国
民の安全を無視した決定が行われるので あれば、これまでのように誰も責任を
とらないのでなく、結果責任を負っていただかなければならない。
大飯3,4号炉の再稼働は、今や見直しが必要なことが確認されている3.11以 前の
基準に基づいて、従来推進を最優先にしてきた組織が判断して決定したものだっ
た。住民の避難計画を作ることもなく、被害が及ぶ隣接県 の住民に納得して も
らえる説明をして了解を求めることもせず、地震対応の拠点となる免震事務棟の
設置もしないまま、さらに原発に近すぎて機能しないことが 明らかなオフサイ
トセンター(緊急事態応急対策拠点施設)の移転も行わないなど、基本的な安全
対策の不備のまま“安全”が確認されたとして、強行された再 稼働なので、直ち
に運転を停止すべきである。
原子力規制委員会の委員人事は、国の原子力政策、ひいては政治が、国民の信頼
を回復できるか否かの岐路に立っている ことを示す重大な問題である。私たち
は、これまで原子力推進にかかわってこなかった人の中から、視野が広く将来を
見据えて判断できる人を 選ぶべきだと考える。
世界の原発数は、スリーマイル島原発事故のあとで伸びが小さくなり、チェルノ
ブイリ事故のあと増加が止まった。福島 原発事故のあった2011年には新設4基、
廃炉決定11基であり、2012年初めの原発は、前年より減少し29か国、427基と
なった。世界の大多数の国々は原子力に依存しないエネルギー政策を採用してい
るのである。
世 界各国は、現在再生可能エネルギーの研究・開発・利用にしのぎを削ってい
る。世界最大の投資国は中国であり、ドイツと米国が続いている。 原発大国と
いわれ るフランスも日本より熱心である。日本では、原子力以外のエネルギー
資源の研究・開発・利用に制度上の制約を加え、貧困な予算措置しかし てこな
かったた め、世界の競争から大きく遅れてしまっている。私たちは、一刻も早
くすべての障害を取り除き、競争に参加しなければ、遅れはさらに広がる と危
惧している。
使用済核燃料と高レベル廃棄物は10万年以上管理しなければならないといわれ、
わが国では処分場の確保もできていない。
東日本大震災では、震源域の北米プレートが50m移動し、7m隆起した。宮城県で
は水平方向に5.3m、上下方向に1.2mの地殻変動が起こり、30分で東日本全体に変
動が波及した。4つのプレートが地下で接している地震国の日本において、1020
世 紀以後の子孫の時代にまで及ぶ負の遺産の安全な管理をすることは、現実性
があるとも健全であるとも言えない。しかも、新たな原発立地を得 ることはで
きず、 既存の原子力発電所の敷地内への原子炉増設も限界に達している。そし
て原発からの使用済核燃料と高レベル廃棄物の一時的な保管場所も不足 する。
原発利用は 行き詰る道を歩んでいるのである。
1950年 代後半に日本で初めて発電用原子炉の英国からの輸入を決めた時に、耐
震性やコストの問題とともに使用済核燃料と高レベル廃棄物処理のめど が立っ
ていないこ とが、日本学術会議の議論の中で指摘された。これに対して推進派
は「技術は、完成してから始めるのでなく利用を始めてからも進歩するもの
だ」と説明して、 批判を無視した。その後50年以上のあいだ基本的な核のライ
フサイクルができなかったのだから、この技術から撤退する以外ない。
原子力を縮小しゼロにすると、発電コストが上がり、電気料金の大幅値上げに
つながると いう議論がある。 これは、石油、天然ガスを毎日輸入する場合と核
燃料を数年間原子炉に入れたままにしておく場合のコストの比較に基づくもので
あり、建設、 解体、核廃棄物処 理、事故への対応、補償、賠償などのコストは
すべてを電気料金に含めることができない巨額になっている。原子力は決して安
くないことを忘 れてはいけない。
すべての原発は最終的に廃炉解体をしなければならない。とくに過酷事故を起こ
した原発の解体には多くの技術開発が不 可欠である。安全に解体を進めるため
の世界最先端技術の国際研究所を、たとえば福島県に設置し、世界に積極的に貢
献することを提案する。
世界平和アピール七人委員会は、ひとりひとりが不安を持つことなく安全に生き
ていくことが可能な世界をつくっていく ために日本が世界の先頭に立つことを
求める。
連絡先:世界平和アピール七人委員会事務局長 小沼通二
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